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公正証書とは

 公正証書にしておいた方が望ましい文書は、遺言や離婚協議書だけではありません。公正証書にしておくメリットは、公証人による判断能力、意思内容、条項のチェックや公証役場での原本の長期保存です。金銭消費貸借契約などは、予め執行認諾文言をいれて公正証書にしておく事で、裁判をせずとも強制執行が可能です。解りやすく、ざっくりと公正証書について書きますね。

 

●公正証書とは

 公証人が、公証役場で作成する公文書です。公文書なので、私文書よりも証明力や執行力が優れています。解りやすい身近なものだと、私文書である自筆証書遺言よりも公正証書遺言の方が証明力が高いので、遺言者の意思はそこに書かれているとおりで間違いないという事になって、誰かが文句を言っても関係無く相続財産が相続されやすいという事です。法的トラブルを未然に防ぐ事ができ、強い証明力を有し、場合によっては執行証書(確定判決と同じようなもので裁判をする必要が無い)にもなります。

 

●どういうものが公正証書になるか

大きく3つで、①契約に関するもの、②単独行為に関するもの、③事実実験にかんするものです。①と②が馴染みがあるものだと思います。

 

①契約に関するもの

 世の中に存在する身の回りにある全ての契約書は、公序良俗に反しないとか法令違反が無い限りは公正証書で作成できます。多くは当事者どうしで署名捺印して保管される契約書ですが、契約と呼べるもので当事者が公正証書で作成したければ可能です。離婚協議書(離婚給付契約)が、イメージしやすい契約でしょうかね。

 なお、法律で公正証書にしないと効力が無い契約や公正証書を予定している契約もあります。任意後見、定期建物賃貸借契約、民法改正により令和2年4月1日以降契約での保証契約での、「保証意思宣明契約」などがあります。

 

②に関するもの

 単独行為とは、当事者一人の意思表示で法律行為が有効になる行為です。相手とか関係無く、自分一人で決めた事がそのまま有効な行為になります。解りやすい身近な物は「遺言」ですね。自筆証書遺言と違い、公正証書遺言は自分の意思でこの内容の遺言を作った(いつ、誰が、どんな内容、遺言である、等)事を、公的に証明してくれます。原本も長期保存してくれます。自分の財産を最後にどうしたいか、自分が死んだ瞬間にどうして欲しいのか、生きているうちに最後の思いを確実に残し願いを叶える手段となります。

 

③は割愛致します。

 

●公正証書のメリット

①証明力、②執行力、③判断能力・意思内容・条項のチェック、④原本の長期保存

 

①証明力

 文書に記載されている全てを公に証明してくれているので、当事者の合意に基づいた真正なもの、真正な当事者の意思という推定がはたらきます。

 

②執行力

 金銭債権の債務不履行の際は、私文書の契約書ならば、その契約書をもとに裁判を起こして勝訴した上でようやく強制執行をする事になります。公正証書の場合は、契約内容に強制執行認諾条項(不履行の時は直ちに強制執行に服するという条項)を入れておけば、勝訴した確定判決と同じ効力を持ち、裁判をせずとも強制執行が可能になります。強制執行認諾条項を私文書に入れておいても、執行力はありません。公正証書にしておかないとダメです。なので、金銭債権が絡むような契約、例えば金銭消費貸借契約や養育費の定めがある離婚協議書等は、公正証書にしておいた方が好ましいと思います。

 

判断能力・意思内容・条項のチェック

 予め擦り合わせて作ったおいた契約書の内容に間違いないか、この人は本人に違いないか、認知症等の判断能力が低くなっていたり無くなっていたりしないか、条項の中身を理解しているか、等々、公証役場の公証人の面前で確認します。法律の内容や文言、文章の内容や言い回しが理解できないと、受け付けて貰えなかったり、取り合ってくれない場合もあります。何度も何度も足を運んで、なんて気の遠くなるような作業はしてくれません。予めやり取りをして叩き台から詳細を確定して、入れる入れない変更する等の煩雑なやり取りをして確定してから、いざ公証役場でチェックしてその場で公正証書にするという流れになります。もちろん、法律に明るい方で公証人と法律的なやり取りが可能なら一人でこなせます。なかなかそうはいかないので、行政書士がサポートの依頼を受けて、ひな形作りから内容確定まで公証人とやり取りをして、依頼者の意思表示内容を公正証書に反映していく事になります。

 

④原本の長期保存

 原本は公証役場に保管され、正本が本人(例えば遺言者)に渡されます。正本は原本と同じ効力を有し、正本を使って手続き(例えば相続手続き)ができます。正本を紛失しても公証役場に保管されているので、再度正本を取れます。原本が保管されるので原本は原則20年間されますが、遺言者が若いような場合はそれより長く保管されます。謄本も交付されますが、正本のような効力は無く内容が分るだけです。

 

●公正証書はパワーがある文書です

 世間ではあまり馴染みが無いのですが、公正証書は上記のように一定のパワーがあります。高齢化社会になり親の財産が判らなくなった、親の財産が判らない、思いもよらず相続で揉めた、そんな方々が晩年を迎えて遺言に関心をもっています。また、3組に1組が離婚をしている現在、お互いが円満に離婚できればそれに越した事は無いのですが、お金が絡む場合は、離婚が円満でも離婚後に頭を悩ませるような事もあり、離婚協議書を公正証書にとの関心も高いです。

 

●公正証書の例

・任意後見契約・保証意思宣明契約・金銭消費貸借契約・離婚公正証書・公正証書遺言

 

・終活においての契約

 生前に関する準備:見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約、尊厳死宣言、民事信託

 死後に関する準備:死後事務委任契約、公正証書遺言、民事信託

 

※ 弊所が、公正証書を作成したいあなたのお力になれれば幸いです。

 

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